なぜ中国人は家が欲しいのか?
家が無いと安全感が無い
中国で生活していると不動産価格の高騰を身近に感じる。自分が住んでいた家の賃料値上げもそうだし、生活圏内にいる中国人から頻繁に地価高騰云々を耳にした。あまり現地のニュースサイト等は見ないのだけど、それでも今日头条などのAPP内で不動産価格高騰のトピックは目にした。極めて高い不動産価格(東京上海比較で同じ郊外だとして2倍くらいする)にも関わらず、不動産購入の話題は一向に絶えない。現代ヒューマンドラマ 「欢乐颂」 の作中においても、この社会現象は見事に表現されており、多少の誇張や現実とは異なる部分もあろうが、概況を伺い知ることができる。簡単に説明すると、女は家が欲しく、それを男に要求し、男が頑張る、というものだ。
中国では結婚時に男性が家を用意しておく必要がある。実態としてはローンで、その頭金を男性側の両親が負担というケースもある。ただ、現実的な価格ではないので、この価値観もやや薄れつつあると聞く、例えば結婚後に二人で買うなど。とはいえど、両親としては一人っ子の娘な訳で、親戚内での見栄の張り合い、メンツ問題もある。(隣の王さんの娘は家と車のある男性と結婚した等等)従い当事者二人が良ければそれでいいというものでもない。比較的早い婚姻、当事者二人の経済環境、親族内でのメンツ等がどろどろに絡み、今現在の若い世代にとって婚姻は極めて難しく煩わしい問題だといえる。不動産購入から婚姻へ話がそれたので元に戻す。婚姻時によく見られる女性の考えが 「没房子就没有安全感」 というもの。日本語だと 「家がないと安全感が無い」 という意味になる。
この 「没房子就没有安全感」 という考えは本当によく耳にする表現で、正直なところ上手く理解が出来ない。家と安全感とにどういう関係があるのか。投機的な動きで異常高騰しているこのタイミングで購入してもリスクしかないのでは?と思うのだが、なぜこの状況下でも家がないと 「没房子就没有安全感」 と言ってるのか?以下調べた結果を列記してみる。
日本とは根本的に異なる社会的背景および環境、制度
賃貸環境
- 家賃は毎年1割ぐらい上がる
- 実際に私が住んでいた家も1年で25,000日本円ぐらい上がった
- しかし収入は毎年1割も上がらない
- 家賃が支払えなければ住む場所がなくなる
- 賃貸人側に有利で賃借人保護の法整備がない、もしくは機能していない、もしくは賃借人が知らない
- 大家が家を売り払うため、急に退去を言い渡さるケースがある
- 実際に私の知り合いがそうなった
戸籍による教育機会の損失
- 田舎の人は都市部に家がないと都市戸籍がもらえない?
- 都市戸籍がないと子供は都市部で就学できない
- ともすると親は都市で仕事、子供は田舎で就学という構図になりかねない
- 教育政策における不平等
投資目的
- 信用できる投資場所がない?
- 股票(株式売買)はあるが信頼性にかける。また暴落すると終了で、手元に何も残らない。家は残る。
人口構成
- 男女構成比、男が多く、女が少ない。結婚時に女性の要求が高くなる。一人っ子なので親からの要求も高くなる。
- 通勤時間
- 交通網の発展不十分。通勤圏内が狭いゆえに人が密集し、家賃があがる。
農村意識
- 共産党の政策として”所有”という概念を認めていなかった。
- 今は”所有”という事が可能になり、そこに安全感を求めている?
家族意識が強い
- 家族の構成要素として人は当然、その場所自体も極めて重要な構成要素。
- その構成要素が借りているという状況に脆弱性を感じ、安全感が無いという。
- 政府が頼れないので互助会形式になるのはイタリア南部でも見られる。
だから家が欲しい!?
ざらっと列記してみたがどうだろうか。政府の政策が影響している部分もあり、なかなか興味深い。家の購入→戸籍→教育機会という関連は、現在の日本にはないもので、情報が無ければ連想するのは難しいと思う。上記理由がいくつか自分にも当てはまれば、確かに家の購入を検討する可能性はあると思う。先に述べた 「没房子就没有安全感」 というのは 「上記理由のせいで、家がないといろいろ将来が不安だ」 ということだと予想する。とはいえど、今の不動産価格で購入するのは依然としてリスクが高いし、購入することで生活水準が下がる可能性がある訳だが、それについてはどう考えているのだろうか。子供の教育費等も中国だから安いということは無いわけで。無理くりローンを組んで結婚し、生活が苦しく、結果離婚という話も耳にする、都市部での高い離婚率とも関係あるのではないかと思うがどうだろうか。
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